茶功アカデミー

第5章 · 4 / 5

手揉み製茶の環境設定

揉み台の高さと材質、「上乾き」を防ぐための室内条件、そして作り手自身の健康状態。手揉みに入る前に何を確認し、用意すべきかを具体的に挙げます。

前の章で全体フローと揉み方の条件を設定しました。
すると自然と、それを実現するためにどのような環境・道具が必要になってくるかも定まってきます。
ここでは手揉みをするときに何をチェックし、用意すればよいのかをお伝えします。

まずは揉み台です。

自分の腰の高さくらいのテーブルであれば、揉んで転がしたりするときに体をうまく使いやすくなります。
また、安定性の高いものを選ぶと良いでしょう。

素材はなるべく自然素材のもので、掃除がしやすく、茶葉が滑りづらく、茶葉にダメージを与えづらいといった条件を備えるものが適しています。

たとえば、表面加工がしてあってツルツルしているテーブルであっても、クラフト紙を敷けば揉み台として成立します。
また、もし竹編みの平たいザルのようなものが身近にあれば、よく事前に洗って馴らしてから使うことで、これも良い揉み台になります。

どのような揉み方をするかによって、揉み台のサイズ・形状・材質を調整すると良いでしょう。
なお、一時置き用のトレイなどその他の道具も必要に応じて準備します。
後述しますが、これらは事前に清潔にしておきましょう。

前章で述べた「上乾き」を防ぐために、お茶を揉むときの環境にもいくつか条件があります。

まず、空気が乾燥しすぎていてはいけません。
クーラーの効いた部屋でお茶を揉むと、空気が外気より乾燥しているため、茶葉が上乾きするリスクが高まります。

一方で、空気のこもった場所も避けたいところです。
空気が動かないと湿気がこもり、かえって茶葉の状態を均一に保ちにくくなります。
穏やかな自然の風が入り込むような空間を選びましょう。

また、日光が揉み台の上の茶葉に直接当たることも避けなければいけません。

そこで、たとえば、直射日光の入らない部屋の窓を開け放って風を通せば、おおむね条件を満たせます。

手揉みは全身を使う運動なので、衣服は動きやすいものを選びましょう。
髪はまとめて、帽子をかぶるようにし、爪は切って整えましょう。

また、手揉みはある種の調理行為です。
完成した茶葉は乾燥状態にあるため食品ほどの厳重な管理体制は必要ないかもしれませんが、飲む人のことを考えれば、食品と同様の衛生対策が求められます。
事前の手洗い・消毒、専用の衣服の着用を心がけましょう。

茶葉が直接接することになるあらゆる道具——たとえば一時置き用のトレイなども——事前に清掃・消毒しておきましょう。

また、手揉みは集中力の継続を要する作業です。
手揉みの空間に余計なものが無造作に散らばっていると集中力を乱す要因となりますので、事前に整理整頓をしておきましょう。

最後に、ミネラルの補給、特にマグネシウム補給を意識しておくことをお勧めします。

長時間の集中作業と発汗では、水分とともにミネラルも失われていきます。
特にマグネシウムは神経や筋の柔軟な動きに関わるため、意識的に補給しておくと安心です。

手揉みをしている最中に感じられる微細な香り、色の変化、体性感覚の変化を見逃さないためにも、自身のコンディションを整えておきたいところです。
マグネシウム比率の高い塩を溶かした水を充分に用意しておくといいでしょう。

手揉み製茶における環境条件の設定は、実際には個々人によってさまざまかと思いますが、ここで紹介したものを最低限の条件として捉え、ご自身の手揉みに生かしていただければと思います。

特に最後に紹介したような、自身の健康状態を管理するための環境設定が意外と重要です。
手作りの茶葉には作った人の気が映る、とも言われます。
ぜひ、できる限り、自身のベストコンディションで手揉みをしていただければと思います。