茶功アカデミー

第5章 · 1 / 5

手揉み茶が世界を変える

千年以上前、養生の妙薬とされた茶はすべて手揉み茶でした。手揉みを生活に取り戻すことが、なぜ本来のお茶と茶文化を呼び戻すことになるのかを語ります。

皆さん、手で揉んだお茶、手揉み茶を飲んだことがありますでしょうか?

もしかしたら、お茶を人の手で作ると言う発想自体が新鮮かもしれませんね。

実際、私たちが現在、街中のスーパーやコンビニで目にするお茶は、多くの工程を機械でまかなっています。

ですが、機械化以前は、ほとんどの茶葉は人の手で作られていたのです。
遠い記憶の中にある手もみ茶は、単なるノスタルジアではありません。
手揉み茶こそが本来のお茶です。
千年以上前、お茶は薬だとか、養生の妙薬と考えられていた時代のお茶は、紛れもなく手揉み茶です。
あらゆる茶文化は、手もみを前提としているのです。
手揉み茶について考え、現代の生活に取り戻す事は、本来のお茶、ひいては茶文化を生活に呼び戻すことになるといえます。
手揉み茶こそ、お茶の気——つまり生命エネルギー、バイタリティ——を最も有していると考えられます。

茶葉に最小限のストレスを与える丁寧な加工が、最大限の風味・栄養・生命力を引き出すのです。

滋味、香り、テクスチャー、そして気、これら全てが温存されたのが手揉み茶です。
エネルギーに溢れた茶葉を作り出す手もみの技術は、まさに錬金術と言えるでしょう。

現代のように管理された空調設備や電気もない時代に、お茶と真摯に向き合った人々がひねり出した究極の選択が、手もみなのです。

日本においては特に、明治期に国として茶葉の品質を上げていく動きがある中で、手もみの技術は急速に発展しました。
品評会や競技会を通じて、各地の職人たちが競い合うようにして技術を向上させていったのです。
さて、これまで見てきた通り、手揉み茶は、その温存された溢れんばかりの茶葉のエネルギーを持って、飲む人に特別な体験をもたらします。
また職人にとっては、手揉み茶を作る仕事自体が瞑想的な体験をもたらしています。

つまり、手揉み茶という存在が、飲む人・作る人に特別な世界を提供しているのです。
手もみという操作は最も原始的でありながら、繊細な茶葉にとっては最も好ましい手段です。

揉むを英語で言うと、Roll(転がす)や、Knead(こねる)といった単語になってきますが、手もみにおける具体的な意味合いは多彩です。

茶葉を水平方向に繰り返し転がすことによって揉んだり、茶葉を強めに押し付けるようにしながら転がして揉み込んだり、また茶葉の向きをまとめて手に収めてから、手の中で転がしてみたり。
これらすべての目標は、茶葉の水分を適切に排出しながら、茶葉の細胞から旨味成分を引き出し、形を整えることなのです。

次回、詳しく見ていきましょう。