茶功アカデミー

第3章 · 4 / 8

お茶の有効成分 前編

ミネラル、クロロフィル、ビタミンC、β-カロテン。抽出液に溶け出す成分と、抹茶や粉末茶のように茶葉ごと摂ってはじめて得られる成分の違いを整理します。

味わいのベース、滋味となる要素が茶葉のミネラル分です。
茶葉は、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンといった多量ミネラルをバランスよく含んでおり、亜鉛、マンガン、セレンといった微量ミネラルも含まれます。

実際にはお茶の種類や産地、栽培方法によってミネラルの組成と含有量は大きく変動します。

マグネシウムは抽出液にも一定程度溶出しますが、茶葉そのものを摂取する抹茶や、料理に使う茶葉では、より効率的にマグネシウムを摂取できると言えます。
茶葉の緑色は葉緑素、つまりクロロフィルの色です。
クロロフィルは光合成を行うあらゆる植物に備わる色素成分です。

植物生理学的には、光合成において光エネルギーを吸収し、変換するという重要な役割を担っています。

ヒトにおける研究では、クロロフィルやその誘導体には、消臭効果や、一部の研究で抗炎症作用や発がん抑制効果が示唆されています。
ただし、ヒトでの有効性やメカニズムについてはさらなる研究が待たれます。

また、クロロフィルの分子中心にはマグネシウムが存在します。
そのため、深蒸し茶や抹茶のように、茶葉自体、またはその粉末を摂取する場合、クロロフィルとともにマグネシウムも摂取することになります。
お茶を飲んで清涼感を覚える一因として、アスコルビン酸、つまりビタミンCの関与が考えられます。
ビタミンCは強い抗酸化作用を持ち、体内で活性酸素を取り除くはたらきがあります。

ビタミンCは熱や光、酸化に弱い性質があります。
そのため、60度以上の加熱、製造工程における酵素による酸化、光への曝露などによって分解され、含有量が減少します。

このため、非発酵茶で、比較的低温で加熱処理(蒸熱や釜炒り)を行う緑茶に、ビタミンCが多く残存する傾向があります。

一方、茶葉酵素による発酵(酸化)を完全に行う紅茶、あるいは途中で発酵を止める烏龍茶では、製造工程でビタミンCが大幅に減少します。

実際、日本の煎茶の茶葉に含まれるビタミンCは、100gあたり約60mg程度です。
ただし製品や産地により変動があります。
そして、紅茶の茶葉では、製造過程で大部分が失われるため、ごく微量(数mg程度) しか含まれていません。

ビタミンE(トコフェロール)は脂溶性の代表的な抗酸化ビタミンで、脂質の酸化を防ぎ、細胞膜や血管内皮を保護するはたらきを持ちます。

お茶の中では、主に茶葉表面のワックス層や油脂分に存在しており、光や酸素による酸化を抑える天然の防御因子として機能しています。

一般的な緑茶の抽出液ではビタミンEの溶出はごく少量にとどまりますが、抹茶のように茶葉を丸ごと摂取する場合には、その摂取量が増えます。

また、茶に含まれるカテキンなどのポリフェノール類と協働して、全身の酸化ストレスを緩和する可能性が報告されています。
β-カロテンは、茶葉に含まれるカロテノイド系色素の一つで、体内で必要に応じてビタミンA(レチノール)に変換されます。

この成分は光合成色素の一部としてクロロフィルと共存し、強い光から葉緑体を守る「光防御色素」として機能します。

ヒトの栄養学的観点では、β-カロテンは抗酸化作用をもち、皮膚や粘膜の健康維持、視覚機能のサポートなどに関与します。

水に溶けにくいため、通常の抽出液にはほとんど移行しませんが、粉末茶や調理用途で茶葉を摂取する場合には取り込むことができます。

特に新芽や若葉を用いた高級煎茶や抹茶ではβ-カロテンの含有量が多く、植物の「光のエネルギー」をそのまま享受するような存在とも言えます。

次は、同じく抗酸化作用を持つカテキンをご紹介します。